2025/04/10 09:00

 クノッソス石鹸の発祥地、クレタ島は、牛頭人ミノタウロスと迷宮ラビリンスの伝説の舞台となった、エーゲ海にある美しい島です。人口は約60万人。大きさは広島県ほど。ギリシャでは最大、地中海全体でも5番目に大きな島です。

 私は、昨年5月にイノフィタのクノッソス社を訪問する際、せっかくだったので足を伸ばしてクレタ島へ寄ってみました。でも、アテネから340kmも離れた島なので、ちょっと足を伸ばす感覚ではなく、また、日帰りでは行けず、2泊しました。まるで、東京旅行に来た外国人が、八丈島を同じ東京都ということで東京の近くの島と勘違いし、八丈島に寄る計画を立ててしまったようなもの。現地人にしてみたら、足を伸ばす距離ではなく、それ自体一つの旅行でした。

 島といっても、四国の半分ほどもある大きな島なので、あまり島といった感じはしませんでしたし、私は、クノッソス宮殿があるクレタ島の中心都市イラクリオン市に行っただけなので、クレタ島を巡ったわけでもありません。ただ、島を思わせるのは、街が海に近く、またイラクリオンの街自体、丘の上に建てられた要塞都市なので、北に広がるエーゲ海が綺麗でした。

 物価自体はやや高め。日本のように気軽に食べることができる食堂がなく、ファーストフードのお店もなく、飲食代が高くつきます。ただ、海鮮をふんだんに使った料理は、ギリシャ本土ではあまりみられないものであり、来たかいがありました。

 クレタ島自体には石鹸を思わせるものは何もありません。オリーブ石鹸はギリシャではどこでも作られており、クレタ島の名産品ではないからです。オリーブの木はそこらじゅうで栽培されており、オリーブの木は密生させず転々と植えられているため、森の中の見通しがよく、風景は素晴らしかったです。

 私は移動にバスを使ったのですが、バスは現地の人たちの生活のためのものなので、やや難易度が高いです。でも、さすがギリシャは観光立国なだけあり、地方都市にも関わらず英語はよく通じました。

 全般的にギリシャ人は驚くほど英語を流暢に話します。ただ、アクセントが弱めなので、どこからどこまでが一つの単語なのか判別できず、英語を母国語とするイギリス人やアメリカ人に比べ、彼らの英語はとても聞き取りにくいです。

 現地人にギリシャ語で話しかけると、最初はキョトンとされます。東アジア人がギリシャ語を話すとは想定していないため、不思議な感じがするのだと思います。ちょうど、欧米人の観光客が、突然、英語なまりの日本語で挨拶してきたら、最初は日本語だと気づけないのと同じです。とりわけ、日本においてはギリシャ語の教材があまりなく、聞く機会もないため、正しい発音が分かりません。カタカナ・ギリシャ語になっていることも大きいと思います。ただ、ギリシャの人は、少し間をおいて、はっと気づいたように笑顔になり、ギリシャ語で返してくれます。

 クレタ島は石鹸としてはインパクトのある場所ではないですが、オリーブ石鹸の原料、オリーブオイルに関しては、ここがその発祥地だと言われています。オリーブオイルは、6,000年前(紀元前4,000年)にクレタ島の農民がオリーブの実を潰して油をとったことが始まりであり、古代ギリシャ時代においては、ギリシャの都市国家を経済的に支える重要な輸出品だったようです。

 今、オリーブオイルの最大の生産国はスペインですが、古代においてはギリシャがナンバーワンだったようです。

 クレタ島は、ギリシャの他の場所と同様、面白いアトラクションなどはありません。美しい風景を眺めゴロゴロする場所です。個人的にはギリシャへの飛行機の乗り継ぎ地として寄ったシンガポールの方が楽しかったです。でも、少し滞在していると、その場所になじみ、ゆったりくつろげる場所でした。