石鹸の製法あれこれ

 商品としての石鹸を作るには、何カ月もかけるわけにはいきません。そこで熱を加え化学反応を活発にする方法をとるのですが、これをすることで、油がいたむことは避けられません。また、グリセリンなどの体によい副産物も失われてしまいます。だから本当に良い石鹸は商品として製作するのではなく、個人の家庭などで作る石鹸となります。そして個人が長い期間をかけ熱を加えずに作る方法を冷製法(コールドプロセス)と呼びます。

 ただ、この製法だとゆっくりとしか化学反応が進まず、1個作るのに2カ月もかかってしまいます。また、塩析(エンセキ)などで、残存する水酸化ナトリウムを除くことができないため、油を多めに入れる必要があります。そうすると、油っぽくてふにゃふにゃして使えない石鹸にもなりかねませんし、また、グリセリンは良い成分ですが、石鹸をドロドロにしてしまう特徴があるため、石鹸がドロドロになりやすく、それなりに使える石鹸を作るのはなかなか大変です。この製法で石鹸を作る場合、オリーブオイルのみで石鹸を作るのは現実的ではありません。

 ただでさえ泡立ちしにくい、溶け崩れしやすい性質を持つオリーブオイル。それを補うため、泡立ちしやすいココナッツ油や、溶け崩れしにくいパーム油などを加えて調整する必要があります。しかし、ココナッツ油(やし油)やパーム油には人の肌に刺激を与えるカプリル酸やカプリン酸が含まれるので、それはそれで問題です。本当に良い石鹸を作るなら、これらの人の肌に刺激を与える酸を除いたココナッツ油やパーム油などを入手する必要があります。
 以下、各製造方法の特徴をご紹介させてもらいます。

<鹸化(ケンカ)塩析法>

製造元 :中規模、小規模の会社

長所  :純度が高い。

短所  :グリセリンなどが失われる傾向にある。

使用感 :さっぱり

製造期間:10日前後

製品  :市販の無添加石鹸

備考  :塩析を繰り返すことで石鹸成分が95パーセント以上の純石鹸を作ることもできます。

<焚き込み法>

製造元 :小規模、家庭向き

長所  :グリセリンや不鹸化物が残る。

短所  :加熱による油脂の劣化が早く、変質しやすい。

使用感 :しっとり

製造期間:5日前後

製品  :液体石鹸・廃油石鹸

備考  :水酸化カリウム(苛性カリ)で作る石鹸は液状になり、塩析ができません。

     液体石鹸はこの方法で作られることが多いです。

<冷製法>

製造元 :家庭

長所  :グリセリンや不鹸化物が残る。

短所  :溶け崩れしやすい。(しかも、苛性ソーダが残ったり、溶け崩れしたりした石鹸は、廃棄が大変です)

使用感 :しっとり

製造期間:1〜2カ月

製品  :手作り石鹸

備考  :市販品にはない高級オイルを使うことができます。

     また、肌のうるおいや保護効果を高めるため過脂肪(スーパーファット)に作ることができます。

<中和法>

製造元 :大規模、中規模の会社

長所  :短時間で大量生産できる。

短所  :グリセリンや不鹸化物がなく、鹸化塩析法より変質しやすい。

使用感 :さっぱり

製造期間:4〜5時間

製品  :市販の石鹸の大半

備考  :保湿効果をうたっているものは石鹸素地にグリセリンや香料をたしています。


 鹸化塩析法は釜焚き製法とも呼ばれます。クノッソス石鹸はこの鹸化塩析法で作られています。なお、日本の多くの石鹸製造メーカーでは、外国から中和法(連続法とも言う)で作られた石鹸素地(チップ状にした石鹸)を購入し、それを固めて自社製品として販売しています。どこで作られた石鹸なのかは、その会社に聞いてみないと分かりません。また、聞いたとしても、どのように作られているのかまでは分からないと思います。それを思うと、製品の安全性に疑問が生じてしまいます。