2024/02/28 09:00

 油を搾るには主に、圧搾法、低温圧搾法、溶剤抽出法と3つの方法があります。まず圧搾法は、圧搾の効率を上げるため、加熱しながら機械で押し潰して搾る方法です。油分が多い原料の場合に用いられます。低温圧搾法はコールドプレスとも呼ばれ、低温(30度以下)で石臼で押し潰して搾る方法です。搾るのに時間がかかりますが、栄養素やビタミンを壊すことなく油を搾ることができます。なお、低温圧搾法は人類が古代から行っていた昔ながらの圧搾法です。溶剤抽出法は、原料に溶剤(ヘキサン)を加え原料の組織を破壊し油を抽出する方法です。ヘキサンは油の精製過程で蒸留により完全に取り除かれます。本来、油分の少ない原料や油を搾った搾りカスからさらに油をとる時に使う方法ですが、この方法は低コストで少ない原料から大量に油をとることができるため、今では油を搾る時の一般的な方法となっています。前者2つは原料を押し潰して油を出す圧搾法。最後の1つは原料を溶剤で溶かして油分を分離する抽出法です。一番よい油が取れるのは昔ながらの低温圧搾法ですが、費用と効率を考えると、とても高価になってしまいます。食品においては、味が大事なので、搾り方は重要ですが、石鹸においては、そこまで気にする必要はないと思います。また、石鹸にする油は味は関係なく、その成分の効果が大事です。そうなると、溶剤で溶かして抽出する一番安価な油ほど実の成分が含まれており、肌に良い効果を与える石鹸となります。


 搾った後の油には、ガム質、遊離脂肪酸、色素、有臭物質などの不純物が含まれているため、精製によりこれらを取り除き、またオイルの色や質感、匂いや風味などを調整します。そして精製することで酸化や腐敗を進める物質が取り除かれ、長期保存が可能となります。

 石鹸の場合、これらの油に苛性ソーダなど強アルカリ物質を加え鹸化反応を起こさせる必要があります。そのため、油の中に残る強アルカリ物質を取り除く処理が必要となります。昔ながらの方法では最初から強アルカリ物質が残らないよう油を多めに入れ、すべて鹸化反応に使うようにします。ただこの方法だと必ず残存油が残り、それが多いと石鹸はふにゃふにゃで泡立ちが悪いものになってしまいます。今では、塩析(エンセキ)と言い、塩を加えてかき混ぜることで、残存した強アルカリ物質を結晶化し、石鹸と分離した石鹸甘水と共に取り除くことで、ほぼ100パーセントの油を石鹸に変え、かつ、強アルカリ物質も残らず除去する方法も用いられています。

 油は酸化します。酸化とは空気中の酸素と油が結合することです。光や熱、空気によって促進され、酸化した油は不快な臭いがしたり、色が濃くなったりし、さらに酸化が進むと毒性を持つ過酸化脂肪酸という物質が作り出されることもあります。ただし、石鹸にしてしまえば、油は酸化しなくなります。でも、長期間保管していると品質が落ちてしまうことはあるようです。また、石鹸内に含まれる他の物質、例えば葉緑素(クロロフィル)などは変色してしまったりします。

 基本的に油は光や熱が直接当たらない冷暗室で保管するのが良いです。そしてまた、油から作られた石鹸も同じく冷暗室で保管すると、いつまでも高品質を楽しむことができます。