2024/08/20 09:00

 “この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた”という本をご存知でしょうか?この本は、大惨事により科学文明が消えてしまったら、どのように生きていくのかが描かれた本。健康で文化的な生活を送るために必要な技術を選び、それらを作る方法を紹介しています。


 石鹸もその健康で文化的な生活をおくるために必要な技術の一つとして、その作り方が紹介されています。この本によれば、石鹸は“予防可能な病気が再流行するのを防ぐうえで欠かせない物質” と紹介されており、また “胃腸および呼吸器系の感染症の半分近くは石鹸で手を洗うことで防げる” と書いています。やや誇大広告のようには感じますが、それでも石鹸は人間の活動において必要な製品であることには変わりないでしょう。

 今から3000年前の古代エジプト時代を考えてみてください。文明による違いはあるものの、おおよそ人間にとって本当に必要な物はその頃からありました。Thinking smartという本にもそのことが書いてありましたが、その後の文明は、贅沢品を増やしより快適な生活にしただけです。スマホがなくても死にはしません。

 私は石鹸が最低限必要な物の一つとまでは考えません。でも、少なくとも、病気の予防といった、快適以前に必要となる製品の一つだとは思います。第一、清潔でないと、生活の幸福度は著しく落ちます。

 この本では身近な自然の物からそれらを作り出す方法が書かれています。石鹸一つ作るにしても、油は比較的簡単に手に入りますが(それでも植物の果実や種を搾るのは大変な作業です)、問題は油を石鹸に変える強アルカリ物質です。それも、“木を燃やしてその灰を水で溶かし、それを煮詰めて抽出することができる”とあります。実際、やってみると大変な作業でしょうが、でも万が一、文明が崩壊した後、生き残れたなら、必要な技術でしょうね。この本には石鹸の他にもいろいろな物の作り方が載っています。かなり有益な本なのでおすすめしたいと思います。

この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた ルイス・ダートネル 著 東郷えりか 訳