2024/07/10 09:00

 石鹸は油に苛性ソーダなどの強アルカリ物質を加えることで、けん化という化学反応を引き起こし製造されます。これはどの石鹸も同じです。ただ、よく混合されがちなのは、ボディーソープやシャンプーなどの合成洗剤。こちらは石油などから化学的に合成される洗浄剤なので、石鹸とは根本的に異なります。

 昔は油をけん化させるための強アルカリ物質として、特定の植物を燃やして得た灰を使用していました。今でも一部の石鹸では昔ながらの灰が使われています。しかし、植物の灰を油が石鹸に変わるほど強いアルカリ物質に濃縮するには、多くの手間が必要です。また1個の石鹸を作るにも多量の灰が必要です。

 ギリシャのクレタ島にはアマルシアという石鹸があります。この石鹸はアマルシアという玉ねぎを燃やした灰を使って作られています。私もこの石鹸を2つ使用してみました。地球の歩き方に投稿された「ハゲが治る石鹸」かどうかは分かりませんでしたが(そもそも私はハゲていないので検証のしようがないですが)、確かに、香り、触感、洗いあがり、その後の肌の状態などなど、他の石鹸に比べ段違いに良かったです。しかし、1個100gの普通サイズで約4,000円(日本円換算)もする高価なもの。とても使い続けることはできませんでした。

 確かに、油を石鹸に変える苛性ソーダは化学物質であり、人体になじまないものです。本当に体に良い石鹸を求めるなら、昔ながらの植物の灰を使った石鹸でしょう。しかし、苛性ソーダが発明されるまで、石鹸は手間暇かけて作る高価なものでした。それを庶民が気軽に使えるようになったのは苛性ソーダのおかげです。実際、日本で流通している石鹸も、ほとんどが苛性ソーダを使って作られています。

 ただ、油にけん化を引き起こさせる強アルカリ物質の違いは、石鹸にそこまで大きな違いを生みません。石鹸の特徴を決めるのは、大部分がその原料となる油です。数ある油の中で、最も古くから石鹸に使用され、また現在に至っても、最も石鹸に適しているとされる油がオリーブオイルです。