2024/05/30 09:00
石鹸の成分表示を見ると、たいてい塩(塩化ナトリウム)があります。でも、家庭で石鹸をつくる時、塩を混ぜたりはしません。
ではなぜ、塩が書かれているのでしょうか?それは、塩を入れ塩析(エンセキ)という方法で、反応後に残った苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)などを取り除いているからです。塩析とは、タンパク質や低分子有機化合物などを含む水溶液に、高濃縮の水溶性の塩類を溶解させることで、溶質を析出(セキシュツ)できることを利用した分離・精製方法です(析出:液体から固体が分離生成する現象)。簡単に言えば、塩を入れることで、水に溶けていた不純物がくっつき結晶となり、それが沈澱するということです。これは “特定の物質は水には溶けるが塩水には溶けない” という性質を利用したものです。塩析をすることで、危険な苛性ソーダを取り除くことができるため、油をあますことなく石鹸に変えることができます。
それは油を節約するだけではなく、石鹸内に油が残存することを防ぎます。石鹸内に高い割合で油が残存すると、石鹸は硬く固まらず、ふにゃふにゃとやわらかいものとなり、泡も立ちません。家庭で作った石鹸は、なかなか固まらず、固まってもふにゃふにゃで泡も立たず使い物にならない。そんなことがあるのもそのせいです。おおよそ工業生産では、石鹸内に残る油の量を2%以下にしているようです。
ただ、石鹸づくりにおける塩析は、苛性ソーダを含む廃棄物(石鹸甘水)が生まれ、それはそのままでは捨てることができません。家庭で石鹸を作る場合、使うことができない方法です。塩析をすると、上に石鹸の原液、下に石鹸甘水と分離します。石鹸原液部分だけをすくいとり、下の石鹸甘水は廃棄するのですが、石鹸原液をきれいにすくい取るには熟練の技術が必要なようです。