2024/04/25 09:00
油の違いはそれを構成する脂肪酸によってもたらされ、油から作られた石鹸は原料の油に含まれる脂肪酸の性質をそのまま引き継ぎます。石鹸において重要な脂肪酸は以下の10種類となります。
1)カプリル酸
ココナッツ油(やし油)とパーム核油に含まれ、洗浄力はないうえに、皮膚に対して刺激となります。そのため石鹸作りにおいて、この脂肪酸を多く含む油は原料の油の内20%以内でおさえることが行われてきました。ただ、今は工業的にこの脂肪酸を取り除く技術が開発され、その処理をしたものはその限りではありません。
2)カプリン酸
ココナッツ油(やし油)とパーム核油に含まれ、洗浄力はないうえに、皮膚に対して刺激となります。そのため石鹸作りにおいて、この脂肪酸を多く含む油は原料の油の内20%以内でおさえることが行われてきました。ただ、今は工業的にこの脂肪酸を取り除く技術が開発され、その処理をしたものはその限りではありません。
3)ラウリン酸
ココナッツ油(やし油)とパーム核油の主要な脂肪酸です。この脂肪酸は石鹸の泡立ちをよくします。また、この脂肪酸が含まれる油で石鹸を作ると、冷たい水でもよく溶け、一方、硬くてしっかりした石鹸になります。さらに、酸化しにくい飽和脂肪酸なので、石鹸がいたみにくくなります。この脂肪酸の特徴を活かすため、ココナッツ油やパーム核油は、上記、カプリル酸やカプリン酸など、石鹸作りに適さない脂肪酸が含まれるにも関わらず、石鹸の原料として重宝されてきました。
4)ミリスチン酸
ココナッツ油(やし油)やパーム核油、豚油(ラード)などに含まれ、石鹸の泡立ちを細やかで豊富なものにします。脂肪酸の融点の温度が高めなので、ラウリン酸よりさらに硬くてしっかりした石鹸になります。
5)パルミチン酸
パーム油、みつろう、ココアバター、動物性の油に多く含まれる脂肪酸です。脂肪酸の融点が60度もあるため、この油を原料に石鹸を作ると、冷水では溶けない石鹸となります。とても硬くてしっかりした石鹸ができ、酸化しにくい飽和脂肪酸なので、いたみにくい特徴があります。「パルミチン酸は脂肪線の増殖をおさえるため、肌にとってはよい脂肪酸ではない」という意見もあります。泡立ちはよくないですが、一度できた泡はしっかりしているため洗浄力は高めです。
6)パルミトレイン酸
マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、ミンク油、馬油に多く含まれる脂肪酸です。人の皮脂の中に10パーセント以上ある脂肪酸で、皮膚の再生に大きな役割を果たしていると言われます。肌への効用を考えれば重要な脂肪酸です。ただ、酸化しやすい不飽和脂肪酸なので、この脂肪酸が含まれることで、石鹸のもちを悪くします。
7)ステアリン酸
ココアバターやシアバターの中に特に多く含まれ、動物性油脂の中にも比較的多く含まれます。脂肪酸の融点は70度と高く、この脂肪酸を含む石鹸は冷水では溶けません。温水でも溶けにくいため、この脂肪酸を多く含む油だけで石鹸を作ることはありません。ただ、一旦、泡ができると、それが崩れにくい特徴があります。
8)オレイン酸
オリーブ油、つばき油に多く含まれる脂肪酸です。石鹸作りには非常に適した脂肪酸であり、この脂肪酸を多く含む油で石鹸を作ると、洗い上がりの肌のうるおいとすべすべした感触が楽しめます。また、この脂肪酸は酸化しやすい不飽和脂肪酸に分類されますが、不飽和脂肪酸の中では酸化しにくいため、長期保存による石鹸のいたみも少ないです。脂肪酸の融点が低いため、冷水でもしっかり溶け、十分な洗浄力を発揮できます。
9)リノール酸
ひまわり油やコーン油に多く含まれる脂肪酸です。皮膚の水分を保つ角質層のバリアの増殖を助ける働きがあるなど、この脂肪酸を多く含む油で石鹸を作ると、肌の健康に良い石鹸ができます。ただし、酸化速度が早い脂肪酸(オレイン酸の10倍)なので、長期保存に適さない石鹸になります。
10)リノレン酸
キャノーラ油(なたね油の一種)、くるみ油、馬油などに多く含まれる脂肪酸です。この脂肪酸を多く含む油は、さらっとして乾燥が早いため、湿潤性の肌の炎症をおさえる働きがあります。しかし、この脂肪酸の酸化速度はリノール酸よりさらに早く、オレイン酸の15倍から25倍とも言われています。この脂肪酸を多く含む油で石鹸を作ると、やわらかく溶けやすい石鹸になり、洗い上がりは軽くてさっぱりします。しかし、長期保存には適していません。
以上、10種類。これらの脂肪酸をの特徴を知っていると、石鹸の成分表を見たとき、その石鹸がどのような特徴を持つのかが分かります。油の世界は本当に奥が深いです。