2024/03/25 09:00

 日本人の大部分はオリーブオイルと言えば、食用のオリーブオイルを思い浮かべます。私がオリーブオイル石鹸を販売していると、「なぜ、わざわざ(食用の)油で石鹸を作ったのですか?そもそも油で石鹸ができるものなのですか?」と聞かれることがあります。まず、多くの方は石油などの鉱物から作られる合成洗剤を石鹸と勘違いしており、石鹸が油から作られることを知りません。そのことを説明すると、大変驚かれます。


 ただ、石鹸を作るオリーブオイルは食用のオリーブオイルとは少し違います。食用油を搾ったオリーブの実に特殊な溶剤を入れ搾ると、味は美味しくないですが、オリーブの実の成分がつまった緑色の油が出ます。食用油を製造している農家や工場では、オリーブオイルを搾った後のオリーブの実は必要ありません。そこに目をつけたのが石鹸製造業者です。廃棄する物を利用すれば、原料を無料、もしくはお金をもらって得ることができます。オリーブオイル石鹸を製造している業者は、このオリーブオイルを搾った搾りかすをさらに搾った緑色の油を使っています。この緑色の油をオリーブポマスオイルと呼びます。マルセイユ石鹸が緑色なのも、アレッポ石鹸が緑色なのも、すべて、この油を使っているためです。また、オリーブオイル石鹸と言えば緑色となっているのも、ほとんどのオリーブオイル石鹸では油色のオリーブオイルではなく緑色のオリーブポマスオイルを原料にしているからです。クノッソス石鹸でもノーマル・グリーン石鹸はこれらの石鹸と同じくオリーブポマスオイルから作られています。ただ、もう一つ、石鹸の原料となる油の出所があります。それは、古くなり食用に適さなくなった油です。食べられる油をわざわざ石鹸にするのはもったいないです。オリーブオイルは長時間保管していると味が劣化します。地中海沿岸の農村では、その劣化し食用に適さなくなった油の有効活用として石鹸が作られてきました。クノッソス石鹸も、もともとクレタ島の農村を巡り、古くなり食用に適さなくなった油を回収して作られていました。古くなったとはいえ、食用のオリーブオイルなので色は油色。石鹸にすると白色になります。その技術を今も引き継いでいるため、クノッソス石鹸では白色の石鹸がメインとなっています。

 食用という点から考えれば、どちらもそのままでは食用には適さない油です。ただ、その油に含まれる体に良い物質の割合を考えれば、オリーブの実の成分がつまったオリーブの実をすりつぶして作ったような油、オリーブポマスオイルが優れています。今ではその点を活かすため、このオリーブポマスオイルの臭みと味を改善し食用に売り出されています。味はそれほどよくないと聞きますが、健康には良さそうです。“食用に適さない油の方が食用に適する油より石鹸の原料としては良い”そんなこともあるんですね。ただ、オリーブポマスオイルはオリーブの香りが強く他の香りを乗せることが難しいように感じます。そのため、さまざまな香りをつけたオリーブオイル石鹸はなかなか見かけません。その点、クノッソス石鹸では、食用のオリーブオイルから石鹸を作っているため、さまざまな香料を加え、いろいろな香りが楽しめます。当店ではまだミルクの香り石鹸しか輸入していませんが、今後はいろいろな香りの石鹸も輸入できたらおもしろいと考えています。